side-Aとside-Bから構成されている。

一卵性双生児の姉かすみとの偶然の出会い、そして妹のゆかりとの出会いから「僕」の物語は紡がれていく。一卵性双生児ゆえにすべての面において似通ってしまうふたりだが、かすみは「アイデンティティーの喪失」に怯えていた。
ゆかりの愛した尾崎に抱いた激しくもかなわぬ恋。その狭間で「僕」は六年前に死んだ恋人水穂への思いが氷解しきれないやりきれなさを抱えながら、二人の運命の歯車に巻き込まれていく。―水穂への愛は本物だったのか。
あくまでドライな「僕」はかすみへの想いとともに変化していく。
sideBは驚きの冒頭から一気に読んでしまった。

設定は比較的安易であり、ステレオタイプであるといえそうだが、"個のアイデンティティー"というテーマの中にはある種の悲哀すら感じるリアルさがあり、感慨深かった。
結局は"自分とは何か"を不断に問い続けるしかなさそうではあるが...。