46歳の誕生日、中年夫婦の不和から妻が家出する顛末を描いた作品。
ある意味では突拍子のない展開に驚きを禁じ得ないのだが、あるいは”事実は小説より奇なり”で、こんなこともあるのかもしれない。

”家族””会社””学校”という均衡に保たれている日常の崩壊は、もしかしたらちょっとしたことで起きるのかもしれない。
しかし、環境を変えてもその人間の本質はそうそう変わるものでもない。

この作品では人間の、誰もが持っている醜い部分がふんだんに散りばめられている。無神経な物言い、騙し、女性関係、仲間内の噂…。感受性の高い読者なら耳が痛いことも多いだろう。

とにかく、遠くへ荒野を走る。
果たして、そんなことは可能だろうか。

私たちは果てしない荒野の向こうに何を見るのだろうか。

だから荒野
桐野 夏生
毎日新聞社
2013-10-08