『ジオラマ』  桐野夏生著



著者が語る・・・

≪子供のころ夢中だった石ころ剥がしなる遊び≫と≪小説を書く仕事≫は似ていると。

『個々の石の下に必ず存在する異世界

~私が生きている世界とは違う理で動いている世界~を

見る驚きやその世界を書くことが≪小説≫なのである。
短編小説を読む恐ろしさは暴露された世界がそのままそこにある事でもある。
作者によって白日に晒された隠微な世界はいずれ干上がり、

死に絶え、地上と何ら変わらなくなっていく。
読者もそこに同時に置き去りにされる事もあるだろう。』


あとがきの言葉である。

「デッドガール」「六月の花嫁」「蜘蛛の巣」「井戸川さんについて」


「捩れた天国」「黒い犬」「蛇つかい」「夜の砂」


そして表題作「ジオラマ」を含む9作の短編からなる≪石ころの下に現れる異世界≫は、


或る時はトラウマな幼児体験だったり、


或る時は見られたくない石下のジメッとした部位に


敢えてスポットを当てる様な居心地の悪さだったり、
それらは作者からの敢えての挑戦状で、日常の当前が一瞬のうちに消えて

現実を一皮剥いて現れる想像の範疇にない光景を心構えなしに見せ付けられる恐怖と驚異。

それでも人間は・・・堕落しようが、破滅しようが、禁断の世界に堕ち様がどうにかこうにか

それを受け入れるんだなという「本能適性」を突き付けられたりする。

怖いけれど、悲しい様な情けない様な感触が残るのだ。

ジオラマとは「箱の中に風景画と展示物を置き、

その箱の1つの窓から中を覗くと照明効果などにより

本当に風景が広がって居る様に錯覚させる見世物」である。



正に桐野氏の世界はコレ。

現実と錯覚の境目が見えない不思議。

桐野氏が作り上げた石下のジオラマに夢中になる内に、

気が付くと、その異世界に置き去りにされて居るかもしれない。

それ相当な覚悟の上、読まれる事をお勧めします。
やはり桐野氏は深くて捩れていて予想出来なくてオモシロイ。

ジオラマ (新潮文庫)
桐野 夏生
新潮社
2001-09-28