自分の中で歴史小説が復権しつつあるような気がします。

多くの三国志モノは映画「レッド・クリフ」がそうだったように「赤壁の戦い」をハイライトとし、長くても諸葛孔明の北伐と壮絶な死までを描いているものがほとんど。今作はその後にスポットを当て、三国統一と晋朝成立までを描きます。

「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の言で有名な孔明の死と蜀軍撤退のシーンからスタート。
孔明の意志を継ぐ姜維と魏の実権を握る司馬懿。
蜀漢と魏の攻防を軸に悲喜交々の歴史物語が繰り広げられる。
このあたり、宮城谷さんの『小説 十八史略』などで読んだことがあったが、真剣に読み入ったのは初めてかもしれない。
もちろん、先の赤壁のように英傑が集結しているわけではないのだが、権力の変遷や人々の生き様はあるいは今にも通じる奥深さを垣間見せてくれた。

帝に佞ねる官僚、腐敗する政治、堕落する人々、荒廃する街。
脱官僚を掲げる民主党は大丈夫でしょうか。
「温故知新」ではないですが、歴史上の経験は大いに生かすべきでしょう。
それからの三国志

 
内田 重久
文芸社
2009-06-01