読書コミュニティ "ブクナビサロン"

名古屋にあるブクナビサロンPassion Portの公式ブログ。 本に纏わる話題やツールの紹介、書評を書いていきます。 相互RSSの提携も募集しています。 webサイト http://www.book-navi.net/

  • Twitter
  • RSS

    今ではサイバーエージェント社長藤田晋氏は多くの人に知られている。
    自分はライブドアを使い続けているが(汗)、ブログと言えばアメーバというくらいメジャーになった。

    しかし、起業して上場して、その後のメディア事業を育てていくという成長戦略はどのように実現していくのか。起業してから持続可能な会社にしていく苦しみを本書では率直な言葉で綴られている。
    訥々とした語り口、平易な文章なので万人向けということなのかもしれない。

    読んでみて改めて感じたのは、インターネット関連事業と、自分の携わるオフラインに根差した生活関連サービス事業とは経営層の考え方も、企業風土もあまりに違うということ。
    会社の在り方も大きく変容しているのを感じた。

    内容が濃いかというとやや疑問だが、経営者の言葉としていくぶんなりとも参考になる本だと思う。

    起業家
    藤田 晋
    幻冬舎
    2013-04-12


    いわゆる正統派文学の系統は得意分野ではないのだが、三島文学も然り。
    「宴のあと」はタイトルから主題に想像がついたので読んでみたくなった作品だった。
    買い置いてしばらく経つが、読み始めると「かづ」の人生の熱情の渦に一気に飲み込まれていった。

    話は雪後庵の女将かづを中心に、そこに訪れる政治家や隠居の面々との交流や来る都知事選の顛末を描く。解説にもあるが、

    「知識人」の空想的な理想より、「民衆」の生命力に富む現実感覚の方がより政治的であった


    ということなのだろう。しかし、それに留まらず作者自身の政治観や安保闘争へのアイロニー、あるいはかづと野口氏に見られるような男女間の根本性質の相違にも焦点が当たっているといえよう。

    個人的には「活力の孤独」という表現に共感を覚えた。
    駆け続けるかづの人生の選択と、野口氏の余生。
    「宴のあと」の対照的な結末にもやはり作者の人生観を垣間見ることになるだろう。

    読者を引き込む終始丁寧な筆致で、世代関係なく読むことができる作品である。

    宴のあと (新潮文庫)
    三島 由紀夫
    新潮社
    1969-07-22

    帯のコピーで即買いした一冊、一気に読んだ。

    「悲劇なんかじゃない これがわたしの人生」

    運命の行方など誰にもわかりはしない。
    逃れられない断崖から極限の秘密を抱えて生きていくことになった人間が、想いを馳せた相手と息子。その人物こそが事件を解き明かす当事者になっていく。
    人との関わりを避けてきたはずなのに、その心の底にはありったけの人間の情愛があった。

    「ありがとう。博美、ありがとう」

    登場人物の有様がありありと瞼の裏に浮かび、涙せずにはいられない。

    "悲劇"という言葉で片付けられない苦しみを抱えて生き抜いてきたから、思い残すことはなかっただろう。
    それこそ一世一代の『異聞・曽根崎心中』の舞台の幕が下りるのだ。

    運命の行方はわからないが、その足跡は確かに残っていく。
    他人の価値観では測りきれない生き様がそこにある。

    筆者の緻密なストーリー構造とともに、そこに横たわる情愛は本当に心に染み入るものだった。
    一読をお勧めしたい一冊である。


    祈りの幕が下りる時

     
    東野 圭吾
    講談社
    2013-09-13

    村上春樹の新作は短編小説集「女のいない男たち」。
    発売してからしばらく経つが、ようやく読了した。
    短編集という形態自体珍しいが、タイトルもまた不思議。
    村上春樹らしさは失われていないが、独特の筆致とテーマが執拗に書かれている印象が短編だけにより濃くなるかもしれない。村上文学に親しんでいない人にとっては違和感を生じると思う。

    彼らに女がいなかったわけではない。
    様々な形で失われてしまったのだ。

    テーマの深層は「木野」で語られているのではないだろうか。

    「欠けてしまった」何か。

    それは私たち一人ひとりにももちろんあるだろう。


    その間隙を縫って「蛇」は忍び寄ってくる。
    それは決してマイナスとは限らないのかもしれない。
    「両義的」なものなのだ。

    そして私たちは確かに傷つきながら生きていくしかないのだ。
    時にひとりで涙しながら。


    女のいない男たち
    村上 春樹
    文藝春秋
    2014-04-18

    このページのトップヘ