読書コミュニティ "ブクナビサロン"

名古屋にあるブクナビサロンPassion Portの公式ブログ。 本に纏わる話題やツールの紹介、書評を書いていきます。 相互RSSの提携も募集しています。 webサイト http://www.book-navi.net/

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    芥川賞作家・金原ひとみの作品「オートフィクション」です。
    人と人とのつながりを少し違った視点から見つめ直す】時に、もしかするとヒントを得られるかもしれない作品です。

    相変わらずの作風でした。
    性と暴力と、そして狂気。
    安易な言葉で片付ける気はありませんが、基本はこの三拍子でしょうか。
    初めて読む人には斬新でしょうが、慣れてくるとちょっとした文章の緩みに飽きを感じてしまったりもしますが。斬新なのか、単に文学作品としての気品が欠けているのか、なかなか受け入れにくい人もいるかと思います。

    「何ですか?オートフィクションって」
    「一言で言えば、自伝的創作ですね。つまり、これは著作の自伝なんじゃないか、と読者に思わせるような小説です」


    主人公は22歳の女流作家リンだ。「彼」とのハネムーンのシーンから始まり、作中で編集者と上記のような会話がある。
    作中に本の(構造的な)ねらいに迫る会話を挿入するのはなんだかユニークな気もしますが、本書は22歳、18歳、16歳、15歳と遡る形で進行していく。

    話を中心は常に"男"であり、それは"甘酸っぱい恋"とは程遠い"依存"だ。冒頭から過激な被害妄想が炸裂しているが、絶えず誰かに依存している主人公は痛々しくもあり、また一方でどこかに自分を見ることもあるだろう。
    人は一人じゃ生きてはいけない-そんに陳腐なテーマは願い下げだろうが、それでも人は何かに依存したり、あるいは依存されることでしか自分を保っていけないときがある。そうでなければ「破綻」するからだろう。"アイデンティティの喪失"とでもいうのかな。

    それは国だろうか。家族だろうか。恋人だろうか。友達だろうか。
    信じては裏切られ、それでも何かを信じないと生きてはいけない。

    一般的に人と人との関係が希薄になったといわれる時代で、リンの苦しみは(僕自身とはずいぶん価値観がかけ離れているものの)すごくリアリティがあるように思う。
    「実体験」かそれに近しいものもいくつか含まれているとは思うけど、そうでないのが多いように思いますけどね。インタビューでは「逆手に取ってみたい」と書いてますしね。

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    ビジネスアウトプット読書会 開催決定!!

    第一回 10月7日 19:00~21:00
    課題本 : マツダミヒロ「しつもん仕事術」一章、二章。

    ファシリテーター 井上哲次

    ※毎月第1火曜日開催予定。
    ※ファシリテーターは回ごとに決める。

    ≪内容≫
    1.事前に読んだ課題本をもとに全体及びチームでディスカッションします。 比較的読みやすいテキストを選んでいきますので、気軽に参加することができます。
    2. 課題テキスト及び当日のディスカッションから、今後のアウトプットについて発表します。

    ≪目標≫
    課題テキスト及び当日のディスカッションから各参加者が実践するアウトプットを創出、共通言語としての学びの場を活用し、参加者同士との交流を深めていきます。

    ≪開催場所≫
    名古屋市熱田区桜田町21番地8
    シェアスペース Passion Port
    ※シェアオフィス「俺の仕事場」と読書コミュニティ「ブクナビ」で構成されています。

    ≪参加する≫
    こちらからお申し込みください。

    http://kokucheese.com/event/index/218273/

    http://everevo.com/event/15987

    ≪注意事項≫
    建設的な議論と友好的な進行のため、次の行為は禁止とします。

    • 他者の否定(人格否定)や誹謗中傷、職位や性別・年齢に起因するハラスメント行為
    • 個人攻撃につながる質問・論争
    • 一人が長く話す事、専門用語の多発
    • 参加者への直接的な営業活動
    • 会の進行中は敬語禁止・ニックネームで呼び合う
    • 本人承諾なしのSNSでのタグ付け
    • その他進行の妨げになる行為や他者への迷惑行為

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    『新世代努力論』   イケダハヤト著


    「努力すれば報われる。頑張れば夢が叶う。
    そういう古い考え方は、もうやめませんか。
    そんな甘い考えが許されるほど、日本は豊かではありません。」

    所謂、80年代以降の若者の救世主的存在である著者から
    古き良き時代を謳歌していた「恵まれた世代」への忠告だ。

    だが、これは耳が痛かろうが、頭がぐるぐるしようが、
    イライラ腹立たしかろうが読んでおくべきだと読後痛感した。

    【下層ノマド】【テクノロジー失業】【努力はスキル】と表題を並べ立ててみると、

    まるで宇宙人語に聞こえるかもしれない上に

    努力に意味などない」「努力とは英語を話すのと同じスキルだ」と言われると

    最早世代の違いをはるかに超えて異星人にしか感じないかも知れない。


    だが良く考えれば、彼の意見は一理ある事に思い当たる。

    グローバリゼーションの影響で外国人労働者は圧倒的に増え、
    インターネットの普及で仕事自体が国境を超えた。

    そしてソレが日本の若年層の居場所を奪って、
    低賃金・低生活コストの地に追いやっているのだ。

    テクノロジー失業も然り。

    人は何もせずとも自動運転車で安全に目的地に運ばれ、
    無人の家を掃除機が掃除してくれる。

    便利この上ない社会に進化しているように見えているが、

    その裏側では労働者はどんどん仕事を機械に奪われているのが

    「進化する社会」だとすると、個人の努力が報われる確率は極めて低い。

    しかし著者は、現社会を全否定しているのではない。

    価値観の大幅変化に応じて意識も、考え方も努力の仕方も変え、

    自他ともに社会を取り巻く現実を的確に認識した上で、

    生産的に人生を送る事を提唱している。

    つまり、かつては圧倒的な成長を誇っていた日本経済は今や縮小化の一途。

    当時のオペレーティング・システムを無理に維持しようと躍起になるのではなく、

    現実に向かい、新しい仕組みに考え直さないといけない。

    著者流の言葉を借りれば、価値観のアップデートと

    日本社会のオペレーティングシステムのバージョンアップを図る。
    これが新世代の道であり、恵まれた世代が気付くべき急所なのだ。

    そして世代を超えて理解し易い納得の言葉もプレゼンしている。

    ☆純粋に没頭できることをし、楽しんだ結果として、成功が待っている。

    ☆適切に努力していく為には自分の認知性を理解する必要がある。

    非常に効率的で無駄のない、極めてロジカルな「人生指南書」だと思う。
    要するに時代も時流も不変である筈がない。

    当然ながらそこに生き、活きる人間の思考も嗜好も行動も変わって然るべきだ。
    ならばそれ相応の適切なスキルを都度身に着けて、

    来る時流に巧く乗っかる事が賢明なのだろう。



    この本を読んで、ふと松尾芭蕉を思い出した。

    ≪草野とも住替る代ぞひなの家≫

    時代は常に新しい住人と共に生きて動いているのだ。






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    『ジオラマ』  桐野夏生著



    著者が語る・・・

    ≪子供のころ夢中だった石ころ剥がしなる遊び≫と≪小説を書く仕事≫は似ていると。

    『個々の石の下に必ず存在する異世界

    ~私が生きている世界とは違う理で動いている世界~を

    見る驚きやその世界を書くことが≪小説≫なのである。
    短編小説を読む恐ろしさは暴露された世界がそのままそこにある事でもある。
    作者によって白日に晒された隠微な世界はいずれ干上がり、

    死に絶え、地上と何ら変わらなくなっていく。
    読者もそこに同時に置き去りにされる事もあるだろう。』


    あとがきの言葉である。

    「デッドガール」「六月の花嫁」「蜘蛛の巣」「井戸川さんについて」


    「捩れた天国」「黒い犬」「蛇つかい」「夜の砂」


    そして表題作「ジオラマ」を含む9作の短編からなる≪石ころの下に現れる異世界≫は、


    或る時はトラウマな幼児体験だったり、


    或る時は見られたくない石下のジメッとした部位に


    敢えてスポットを当てる様な居心地の悪さだったり、
    それらは作者からの敢えての挑戦状で、日常の当前が一瞬のうちに消えて

    現実を一皮剥いて現れる想像の範疇にない光景を心構えなしに見せ付けられる恐怖と驚異。

    それでも人間は・・・堕落しようが、破滅しようが、禁断の世界に堕ち様がどうにかこうにか

    それを受け入れるんだなという「本能適性」を突き付けられたりする。

    怖いけれど、悲しい様な情けない様な感触が残るのだ。

    ジオラマとは「箱の中に風景画と展示物を置き、

    その箱の1つの窓から中を覗くと照明効果などにより

    本当に風景が広がって居る様に錯覚させる見世物」である。



    正に桐野氏の世界はコレ。

    現実と錯覚の境目が見えない不思議。

    桐野氏が作り上げた石下のジオラマに夢中になる内に、

    気が付くと、その異世界に置き去りにされて居るかもしれない。

    それ相当な覚悟の上、読まれる事をお勧めします。
    やはり桐野氏は深くて捩れていて予想出来なくてオモシロイ。

    ジオラマ (新潮文庫)
    桐野 夏生
    新潮社
    2001-09-28


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    出光興産。
    就職活動の時に、確かに聞きました。創業者精神が根づく、ある意味では宗教みたいな会社だ、と。
    その、ある種の偏見は間違っていないのかもしれないけれど、この本を読んで印象は全く変わりました。
    それは「出光佐三」という、一企業という枠組みに収まらない"日本男児"だったからに他なりません。

    規制に縛られた戦前・戦時中・戦後の日本を、政府にもGHQにも楯突き、信念を曲げることなく闘い続けた生きざまをこれでもかと見せつけられました。少なからず美化されている部分もあるでしょうが、現代に生きる経営者にこれだけの迫力はあるでしょうか。

    妥協という甘えに逃げている自分を恥ずかしく思いました。


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